国際交流ファシリテーター20周年記念

トークセッション

「これまでの20年、これからの展望について」後半

これからの20年に向けて

上越教育大学大学院 特任教授 釜田 聡先生

混乱する世界情勢と教育の役割

これから20年ということなんですが、

早速20年後って何年になるか計算していただくとわかりますよね。2045年になります。

皆さん、何歳になってますかね?

実は歴史的に見ると、戦後――日本の「戦後」という言葉を使わせていただくと、

100年を迎えます。

それからもう一つ。国連も100歳なんです。

国連では、SDGsということで皆さんも興味関心があると思うんですが、

2030年がゴールですよね。
実は国連は、その2045年に向けてもう動き始めています。

2030年のSDGsの次、いわば「後継目標」のようなものを2045年に設定するだろうと。
私の知人にも携わっている方が何人かいて、情報をいただいているんですけれども、

今のガザの問題ですとかウクライナの出来事なども踏まえて、国連が一生懸命取り組んでいます。
なかなかうまくはいっていませんが、もっと世界全体の力を借りていくことで、

そうした課題も克服できるのではないかということで、

とりわけ教育に力をいれて、「ESD(持続可能な開発のための教育)」という形で進めています。

さらにそれを加速させようということで、すでに取り組みが始まっています。
そしてこのESDというのは、実は日本が先駆けて提言したものです。

小泉元首相が世界に向けて宣言して、

日本が責任を持って教育の力で持続可能な社会をつくろうと呼びかけました。

世界全体は2045年を目標にしていくわけですが、日本も戦後100年に向けて、

くわえてESDを宣言した日本が責任をもって進めていこうという動きが出てくると想定されます。

そう考えると、皆さんが今取り組んでいることは、その未来とつながっているわけです。

これから20年経った時に、今日の佐々木先生のイベントの意味がまた新しく見えてくると思いますので、楽しみにしてほしいと思います。
一歩一歩、今のワークショップに取り組むことで、20年後の社会に確実に何かを残しているはずです。
ぜひ関心を持って、世の中と自分のことを考えていってください。


「多様性を包摂する」教育へ

もう一つ、皆さんにメッセージをお伝えしたいと思います。
今、世の中では「分断」「排除」「攻撃」という言葉が飛び交っています。
耳にするたびに、気分が悪くなるほどです。

SNSなどでもそうです。
私はYouTubeはあまり見ませんが、

皆さんの耳にもそうした発言が届いていると思います。

実は「中央教育審議会(中教審)」という、日本の教育方針を決める機関があります。
そこに昨年12月、新しい諮問が出されました。
その諮問を受けて、学習指導要領の改訂が進められています。

学校の先生たちはそれをもとに創意工夫をして教育を進めていくわけです。

そこに書かれていた内容を、少し紹介します。

子どもたちは今、社会的に「学びに向かえない」。
主体的ではなく、押しつけられて、テストのための勉強になっているのではないかという指摘です。

そしてこれからの時代に必要なのは、「多様性を包摂する力」である。

そういう教育を進めてください、と書かれていました。


異質なものを排除する、

自分と興味関心が合わない相手や自分の悪口を言った人に対して2倍・3倍で攻撃をする、

そういう傾向が学校で見られる。

また、学校現場では、

正解主義――正解が一つしかない授業ばかりになっているのではないか――

そんな問いかけもありました。今の学校は、同調圧力が強すぎる。


「先生も、クラスも、友達も、みんな同じでないといけない」という雰囲気があって、

子どもたちはクラスの中や授業中にそれに怯えているのではないかという指摘です。

読んでいて、まったくその通りだと思いました。
さらに感動したのは、

「民主的かつ公正な社会の基盤としての学校づくりを」という言葉が書かれていたことです。

皆さんのワークショップを思い出してみてください。
「正解は一つじゃないですよ」とか、

「クラスの雰囲気に同調しなくてもいいですよ」とか、

そうした言葉を子どもたちに伝えていますよね。

民主的で、公正で、多様性を尊重する。
それは、まさに皆さんが実践していることなんです。

2030年以降、教育はさらにそういう方向に進んでいきます。
分断や格差の拡大を防ぐことも、学校教育に求められていきます。


「共創的対話」の実現をめざして

20年前から今、そしてこれからの20年をこうして見通すと、
このワークショップの取り組みはまさにその流れの中にあると思います。

この活動はますます期待されていくだろうということを、いろんなものを読んだり、

皆さんの活躍を聞かせてもらって、ますます自信を深めました。

最後に、一つヒントをお話しさせてください。
「共創型対話」という言葉があります。

集団で話し合いながら、新しいものを作っていく

――まさにファシリテーターの活動そのものです。
短い時間の中でも、そうした“共創的な対話”を仕組むことで、

新しい方向をみんなで作っていく。
それがこれからの時代に必要な力だと思います。

共創的な対話をするうえで、大事なのが「沈黙」です。
間を取ること。

SNSのように、すぐ反応して返すのではなく、
批判的に検討したり、悩んだり、言葉を選んで考える時間を持つ。
それがとても大切です。

言われたことにすぐ言い返すようなやり取りではなく、
シーンとする時間、悩む時間をちゃんと確保すること。
それが「共創的な対話」に必要な姿勢だと思います。

少し長くなりましたが、以上です。

敬和学園大学 人文学部国際文化学科教授 丸畠宏太先生

余計な前置きをしないほうがいいんだけど、したくなってしまって。
「20年先のことを」と言われたときに、自分を思い知らされました。

今日、久しぶりに黒田先生にお目にかかったのですが、第一声が「痩せた?」でした。

実は数年でだいぶ老けました(笑)

本筋に戻ります。


結論を急がない、わからないなかにとどまり続ける力

20年後は、私はまずいないと思います。
でもね、最近、我慢がならなくなってきたことがあるんです。
特定のものを指しているわけじゃないですよ。

この間の選挙なんかありましたでしょう。
ああいうところに出てくる言葉が、どれほど下品になっているか、

みなさんお気づきですか?
ひどすぎますよ。

内容が良いとか悪いとか、どの党がどうとか、そういうことではないんです。

今まさに釜田先生がおっしゃったことにつながっていくんですけど、
「丁寧に言葉で考える」「悩む力」「結論を急がない」「間を置く」。
今の社会はそれに反していることばかりではありませんか?

ファシリテーターって、それを教えなきゃいけないじゃないですか。

学ばなきゃいけないんじゃないですか。

今、ものすごく人間の忍耐力が減っていると思います。
人間だから、誰かのせいにしたくなる。
だから陰謀説だらけでしょう。

私は専門が歴史学なので、今それがとても気になっているんです。


当たり前を疑い、じっくり考えること

だから、難しい方針とか大きな話ではありません。
文科省が偉そうなことを言っていても、教育はむしろ後退しているとしか思えません。

だからこそ、皆さんにはぜひ、
「当たり前を疑う」、「じっくりと考えること」。
相手の言うことに、虚心坦懐に耳を傾けること。
結論を急がず、間を置く、丁寧に言葉で説明すること。

これ、全部ファシリテーターそのものじゃないですか。
それしかないんですよね。

皆さんがこれを作っていかなかったら、世の中は潰れます。
その前に私は死ぬから、なにも見なくていいんですけどね(笑)。

こういうことを言ってばかりいるので、最近は学生に嫌われるようになりました。
でも私は、言い続けます。

それだけです。

公立大学法人新潟県立大学 副理事長 黒田俊郎先生

今後の20年間の最初の第一歩としては、
今回、8つの面白そうなワークショップがありますよね。

ワークショップは、演劇と同じで一期一会。

まず、皆さんがいいワークショップを、小中高の現場でやり切ること。
それをやることが、今後の20年間の最初の一歩なんじゃないかなと思います。


「遅くて重たい情報」は人の生き方を変えることができる

子どもたちは多分、軽快で早い情報が好きなんですよ。

それでワークショップを作りながら、

それはまさに、現場でしかできないことなんです。


次なる夢:海外でのワークショップ

そして次の20年間の夢を語らせていただくなら、
「一回、海外でワークショップをやれないかな」と思うんです。

海外でと言うと、
英語でやらなきゃいけないと思うかもしれませんけど、
例えば日本の国際交流基金がモンゴルとか東南アジアに日本センターを作っていて、

そのセンターでは、日本が大好きな子どもたちや若者たちが集まって、
日本語を学んだり、日本文化を学んだりしています。

そういう場所であれば、日本語のワークショップでもいいと思うんです。

僕はラグビーが好きなんですけど、
イギリスでは、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イングランドが
「ブリティッシュ・ライオンズ」という四協会合同チームを作って
ときどき世界を回っているんですね。

それと同じように、四大学・五大学が「ある種の新潟ライオンズ」として、
スペシャルなワークショップチームを作る。
五年に一回でもいいから、近場のアジア太平洋で開催する。

そういう形で、様々な経験を積むことができたら、
皆さんにとっても非常に大きな経験になるし、記憶にも残ると思います。

そんな活動が一つでもできたら、
次の20年はきっと楽しいものになるんじゃないかなと思います。

以上です。

新潟国際情報大学 国際学部 教授 山田裕史先生


私はカンボジアの研究者なので、先ほど黒田先生のお話にあった「海外でのワークショップ」は、まずカンボジアで実施してみても面白いのではないかなと思いました。
非常に親日的な国で、日本語を勉強している学生たちもたくさんいますから。


外国人は怖い?:子どもたちの変化

「これからの20年」というテーマですが、
先ほどの激励の言葉(開会式での挨拶)でも少し触れたように、
今、子どもたちが外国人に対して恐怖心や嫌悪感を抱いているという現実に私は大きなショックを受けています。

私が子どもの頃は、
外国人は「自分と違うからおもしろい」「どんなことを考えているんだろう」と興味を持ちましたし、
「もっと外国のことを知りたい」という好奇心がありました。

しかし、今は、単に関心がないというだけでなく、
むしろマイナスのイメージ、もっと言えば「恐れ」のような感情を持っている子どもが増えていると聞きます。


子どもだけでなく、大人も巻き込む必要性

学校教育の現場では、多様性や多文化共生という方向に向かおうとしているはずです。
それなのに、子どもたちが逆の方向に向かっているようにみえるのは、

やはり「親世代の影響」が色濃く反映されているのではないかと思います。

先ほど丸畠先生が選挙のお話をされましたが、
先月の衆議院選挙の結果を見ても、
「日本人ファースト」を掲げる政党や、排外的な政策を訴える勢力が一定の支持を得ていました。

特に子育て世代の中心である40歳代、50歳代、次いで30歳代の支持が多かったのです。
つまり、今の小・中・高校生の親世代が、まさにその価値観の中にいます。

そうした家庭環境の中で育つことで、子どもたちが無意識のうちに「外国人は怖い」

「関わりたくない」といった否定的なイメージを内面化してしまっているのではないでしょうか。

もちろん、皆さんが学校現場で子どもたちに向けてワークショップを実践していくことはとても重要です。しかし、それだけでは不十分かもしれません。
これは、国際交流協会も各大学も考えなければいけないことだと思うのですが、

「子どもたちだけに働きかけるのではなく、その親世代をどう巻き込み、理解を得ていくのか」

という視点を持つことが、重要な課題になってくると思います。


時代の潮流に向き合う:これからのファシリテーターの役割

なぜなら、もし今大人たちの排他的な考え方がそのまま次世代に継承されていけば、

社会全体がますます内向きに、排他的になっていってしまうでしょう。

それは、私たち国際交流ファシリテーターが目指している「共生」や「国際理解」といった

方向性とは、根本的な社会観において真逆の流れです。

だからこそ、今の社会状況に対して、この事業全体としてどう関わり、どうやって大人の理解も広げていくのか。

それが、これからの20年を考えるうえでの大きなテーマであり、私たちが挑むべき課題の一つだと思っています。

ありがとうございました。

新潟国際情報大学 国際学部 教授 佐々木寛先生

あっという間に時間が経ってしまいました。

今、先生方が期せずして、何の打ち合わせもないのに
同じようなことを考えていたというのが印象的でした。

釜田先生からは「民主主義」「公正」「悩む力」といった言葉が出てきましたが、
それらは教育の中で古典的な価値でありながら、今まさに失われつつあるものでもあります。

一方で、テクノロジーだけはものすごい加速度で進歩している。
特に、これから皆さんが取り組むワークショップにも関係しますが、
AIというものは社会の条件を根底から変えていくだろうと思います。

大学教育だけではなく、社会全体を変えていく。
これからの20年、つまり2045年には、
もしかすると戦後100年になっているのか、本当に戦後なのかという恐怖もあります。

AIによって、社会のあり方が根底から変わってしまっている可能性もある。


あらゆる垣根を越えて、共に考え、つくっていく

そうした中で、これからの20年は
さまざまな「複合的な危機(ポリクライシス)」が起こるでしょう。
しかし、だからこそ、
この国際交流ファシリテーター事業も、
そして皆さん一人ひとりも、
そうした厳しい時代の中で「普遍的な価値」を守りながら、
共に創り出していくメンバーであってほしいと思います。

あらゆる垣根を越えて、共に考え、つくっていく。
20年後には、今ここにいる皆さんもお父さん・お母さんになっているはずです。
次の世代を育てながら、
また新しい世代とともに、未来を形づくっていってください。

今日は先生方、本当にありがとうございました。

公益財団法人新潟県国際交流協会 廣瀬 勝利氏

事業の20周年という節目を、皆さんとともに振り返るだけでなく、
次の20年をしっかりと見据える貴重な時間となりました。

ご登壇いただいた皆さま、ありがとうございました。
以上をもちまして、トークセッションを終了いたします。