新潟は、北東アジアと密接につながる本州日本海側の「表玄関」であり、近年の経済・文化交流の増進は、地域の国際化に対応しうる人材の養成を強く求めています。

新潟国際情報大学が実施する国際交流ファシリテーター事業は、こうした地域的ニーズに応えるべく、県内の地方自治体、国際協力組織、小中学校・高校、地場企業、NGOといった多様なアクターとの協力・連携により、大学生を「国際交流ファシリテーター」として養成します。ファシリテーターたちは、県内小中学校 ・高校に派遣され、そこでワークショップ形式の国際理解教育を行います。

このような参加型実践教育プログラムによって、学生は国際社会に関する基礎・専門知識を習得しつつ、コミュニケーション能力・チームワーク能力を身につけること、児童・生徒は国際社会への関心と学習意欲を高めることがそれぞれ期待されます。

これにより、地域社会の国際化・活性化を目指します。

(特色1)国際交流ファシリテーターの養成

国際交流ファシリテーター事業は、学生の自主性を最大限に活かします。

国際交流ファシリテーターを希望する学生は、「国際交流ファシリテーター」(全学年対象)を履修します。そこでワークショップ実習、学内外の講師による講義によって構成される研修(3~4ヶ月)を受けます。

これらの研修を修了した学生は、(公財)新潟県国際交流協会より、国際交流ファシリテーターとして認定されます。認定期間はその年の年度末までとなり、これまでに計1357名(2022年現在、重複含む)が国際交流ファシリテーターとして認定されています。なお、平成19年度より敬和学園大学、平成20年より県立新潟女子短期大学(平成21年4月より新潟県立大学が開学)、平成24~25年度は上越教育大学もこの事業に参加しました。さらに、平成28年度より新潟大学も加わり、五大学で行われています。 

図1 年度別ファシリテーター(インストラクター)数

(特色2)小中学校・高校への派遣

晴れてファシリテーターとして認定された学生は、テーマごとにいくつかのグループを、それぞれ6~7名前後で形成します。テーマは大きく分けて、「世界の現実」「世界の不平等」「異文化理解(多文化共生)」の3つです。各チームはそのなかで、さらに具体的なテーマを取り上げます。これまで各チームがとりあげてきた具体的なテーマは次の通りです。

★ワークショップのテーマ一覧

それらのテーマに沿ってワークショップ形式の国際理解プログラムを作り、新潟県国際交流協会が募集・選定した新潟県内の小中学校・高校で、児童・生徒に対してワークショップ形式での国際理解教育を行います。派遣開始一年目の平成18年度は10校,前年度(2020年度)は新型コロナウイルスの影響で後期派遣の20校のみに派遣されました(38ワークショップ実施)。これまでの派遣先は、次の通りです。

★これまでの派遣先一覧

とりあげるテーマの選定や、授業準備、教材作成、さらに対象校との打ち合わせは、新潟国際情報大学国際交流ファシリテーター事業学内委員会(後述)の指導の下で、すべて学生によって行われます。

本学が行うワークショップ(workshop)とは、「学びの理論と実践」を指します。それは、ある材料を一方的な講義スタイルで伝えるのではなく、アイスブレーキングやグループディスカッション、シミュレーションなどを用いることで、参加者がよりそれぞれの事柄を現実のものと感じ、より自由に意見を述べることのできるよう促す教育空間です。

この事業は、学生と児童・生徒たちの交流を通して、地域における国際理解教育を推進する事業として、県内で高い評価を得ております(メディア情報、教員アンケートを参照)。また、ワークショップ終了後のアンケートなどで指摘された点については、評価のプロセスにフィードバックする体制が確立されています

★平成18年度の派遣先の声

★平成29年、30年、令和元年の派遣先の声

(特色3)多様なアクターとの連携

こうしたファシリテーター事業の実施および評価に当たっては、学外の多様なアクターとの密接な連携・協力体制が確立されています。

◆実施体制(図2参照)

年度計画、ワークショップの具体的日程・内容の調整および経費等の策定を行うことを目的として、国際交流ファシリテーター事業連絡会議が年数回程度開催されますが、そこには新潟県国際交流協会および国際協力機構(JICA)、ワークショップが実施される県内小中学校・高校の教員、そして本学の学内委員会などが参加します。

これとは別に国際交流ファシリテーター事業全体会議には、連絡会議メンバーのほかに、本学学長ならびに新潟県国際理解教育推進協議協議会メンバー全体が参加し、連絡会議で策定した年度計画等が適正かを検討し、最終決定を行います。

図2 取組の実施体制

◆評価体制(図3参照)

評価小委員会は、上述した連絡会議に、学生ファシリテーター代表2名を加えて構成し、本学学生のワークショップおよびファシリテーター派遣事業に対して評価、反省・改善点の指摘を行います。評価大委員会は、全体会議のメンバーに加えて、北東アジアを中心に活躍する県内企業・経済団体の代表によって構成され、新潟が求める人材の視点、地域活性化の視点から本学の取組、ワークショップの実施等について検討、評価、提言を行います。

図3 評価の流れ

2023年度 学内委員会メンバー(国際交流ファシリテーター事業担当)

佐々木 寛国際学部教授
山田 裕史国際学部准教授
小宮山 智志経営情報学部准教授
宮本 裕美国際交流ファシリテーター事業推進員
羽田 幸恵国際交流ファシリテーター事業推進員
中原 澪佳国際交流ファシリテーター事業推進員

(特色4)地域社会の国際化・活性化

こうした国際交流ファシリテーターの養成・派遣による小中学校・高校の国際理解教育推進プログラムは、次の効果を持つものと考えます。

第1に、このプログラムの実施は、学内において学習意欲の向上と知的雰囲気の高揚につながります。これにより、取組に直接参加しない学生にまでも広く波及効果をもたらし、既存のカリキュラムの教育効果を高めることが期待されます。

第2に、実際にワークショップを受講した児童や生徒を、次世代における地域の国際化推進のための人材と位置づけ、大学の教育研究の成果を地域社会に還元することで、地域社会の国際化を推進します。国際理解教育の担い手不足という教育現場からの要請に対応した小中学校・高校における総合学習の内容の豊富化、それに伴う児童や生徒の学習意欲の向上が図られます。

第3に、地域社会の国際化というニーズに対応し、大学が新潟県国際交流協会、新潟県教育庁、国際協力機構(JICA)、NGO、地元新聞社など様々なアクターと協力・連携した、新たな総合的国際理解教育のモデルをNUISモデル(NUISは本学〔英語名Niigata University of International and Information Studies〕の略称)と名づけ、県内外に普及させます。

図4 国際理解教育のNUISモデル